: 2011年9月19日

放射能に向き合う<上> 母親らがネットワーク みんなで手つながないと 群馬

放射能に向き合う<上> 母親らがネットワーク みんなで手つながないと 群馬


ネットワークを立ち上げた菊川さん(左)と青木さん=前橋市で

「心配のないところに心配を生むようなことはやめてほしい」

前橋市の青木恭子さん(41)は東京電力福島第一原発事故後、長女(8つ)の通う小学校の校長にこう言われた。水道水の放射能汚染が心配だからと「娘に家から水筒を持たせたい」と学校に願い出たときの反応だ。

原発事故が起きて、放射能の影響を初めて真剣に考えた。放射線は生物の細胞を傷つけ、長年かかって病気を引き起こしたり、子孫に障害を起こすこと もある。空気や食べ物、水を通して放射性物質を体内に取り込む「内部被ばく」も心配になった。「放射性物質の濃度が国の暫定規制値を下回った食材だとして も、子どもが食べ続けて本当に安全なのか」。そう口にすると、「神経質すぎるよ」と親や周りに言われ、孤立感も持った。町でマスクをかけた子どもを見かけ ると「あ、この子のお母さんも心配してるのかな」と心の内で思った。

長男(5つ)の通う保育園で七月、同じ保護者の菊川麻里子さん(43)らと勉強会を開いた。「自然保育」の考えから素足や外の散歩が日課の保育園 で、どう気をつければよいのかも知りたかった。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故を機に活動を始めた民間団体から講師を招いて、百人の定員で講演会を開い た。太田市や富岡市など県内各地から参加があり、会場に入りきれなくなった。

「気にしている人はいたんだ、と思った」。七月中旬、菊川さんとインターネットのソーシャルネットワークサービスを活用して市民グループ「放射能 から子供を守ろう@前橋市」をつくった。今三十人ほどが参加する。食生活などのヒントや行政への働きかけなど、できることがあるのか、互いの情報を持ち 寄っている。

原発事故について国の情報の出し方は遅かった。「情報を隠してると感じる。自分で防御するしかないし、みんなで手をつながないとどうしようもない」

菊川さんは「これくらいの電力しかないなら、こう生活していこうと考えたい」と脱原発と省資源型の暮らし方も考え始めた。



福島第一原発事故が起こり、群馬でも放射性物質が常に身近にある暮らしになった。どう向き合うか。動き始めた人たちに会った。

東京新聞:放射能に向き合う<上> 母親らがネットワーク みんなで手つながないと:群馬(TOKYO Web)

放射能に向き合う<下> 調べる・伝える・動く 逃げない 人任せにしない

東京新聞:放射能に向き合う<下> 調べる・伝える・動く 逃げない 人任せにしない:群馬(TOKYO Web)


「できることはやってきた」と話す竹市さん=藤岡市で

保育園の園内にある家具は角が丸い。

 「子どもの成長に危険を及ぼす可能性は排除する。放射能に対しても同じ」とひかり保育園(藤岡市)の竹市義徳園長(38)は言う。

 福島第一原発事故後、園児約二百五十人の周りから放射性物質を排除しようと「できることはやってきた」。放射線量測定機を三台、計約四十万円で購入し、園庭や芝生などあちこちを計測。行政の測定だけでは「足りなかった」。浄水器を二台設置し、給食の食材は西日本産中心に変えた。砂場やプールの使用をやめ、職員に研修もした。

 「大人の気配りで防げるところはたくさんある。明るく慎重に付き合いたい」

 十月には約九十万円で購入した食品の測定機も届く。毎日の給食を測るつもりだ。他の保育園からは「そこまでしなくても」の声も聞くが、市外から住所を移し、子どもを通わせる親もいる。

    ◇

 「福島原発で何が起こったの??」

 夏休み真っ盛りの八月中旬、前橋市富士見町で小中学生三十人に“授業”があった。

 退職教員を中心にフリースクール「今生塾」のスタッフが、広く子どもたちを対象に開いた「夏の学校」。全五日間のうち一日は、午前と午後各二時間、事故後の対策から文明のありようまで、原発の話が続いた。

 「大人も知らないことがたくさんある。内部被ばくの話などは子どもには難しかったな」とスタッフの金田倫光さん(79)。同じスタッフの松本美津枝さん(75)は「逃げるわけにはいかないのだから、学習しなければ」。

 子どもに放射能を伝える冊子作りに取り組み始めた。来年度は学習指導要領の改定で、中学校の理科に「原子力」が復活する。

    ◇

 おしゃべりランチ会、しませんか-。

 高崎市の佐藤里香さん(42)は今月、インターネットで呼び掛けた。放射能について不安も愚痴も、情報交換もしましょうと。

 「事故があって、初めて日本に五十四基も原発があると知りました。クリーンなエネルギーではなかったということも」

 本を数冊読んだ。約五万円で買った放射線量測定機を携帯する。数値の変動を目安に、高めな場所には、中一から二歳まで三人の子どもに近寄らせないようにしている。

 「調べて、分かって自分でできることはしたい」と思う。 (この企画は鈴木久美子が担当しました)

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